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昭和55年に、神一郎はケースワーカーを設置したり、訪問看護を強化したりと開放化のための準備を着々と進めている。
正式な訪問看護が始まる前の昭和52年頃に弘光は訪問看護を始めていた。この頃はまだ保険では認められておらずボランティアだった。訪問看護をはじめた理由は「家庭を見ないと病気は治せない」と感じたからで、それだけ患者さまの病気を治すことに熱心だった。
この傾向は神一郎にも見られる。「医療と福祉の境界や保険で、認められるか、認められないかは関係なく、患者さまにとって必要なことで、自分達にできることはやっていきたい」と神一郎は語る。現にデイケアは、保険で認められる前から場所を借り、完全なボランティアとして実施していた。 |
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訪問看護ステーションは
病院に併設ではなく街の中に作った。 |
訪問看護ステーションは市役所の近くにあり、精神科訪問看護とともに老人訪問看護を行っている。ここで働く登口千春は「病棟で働いていたときに比べ、家族とも直接かかわれるし、患者さまとも1対1で接することができるので関わりが深くなると思っていました。それに病院だったらリハビリなら理学療法士にまかせるなどして、私たちは看護だけでいいのですが訪問看護ではある程度は私たちがしなくてはなりません。それだけに勉強が欠かせません」と仕事に取り組む姿勢を語る。
退院することが不安でなかなか退院に応じなかった人でも、「訪問看護で支えるから」と励ますと応じる方もいる。そのような方を訪問すると意外にしっかり頑張っていたりする。しかし、登口らがもっと関わっていきたいと思う患者さまほど『来てほしくない』と拒否される傾向にあるという。自己負担金が負担になって訪問看護を断わる患者さまもいる。それだけに無理に訪問することはできない。患者さまの負担を考え月1回しか訪問しないこともある。訪問回数が少ないことが彼女らの悩みの種になっているようだ。課題は「少ない訪問回数の中でどのように支えてゆくのか」だという。 |
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こなとミルクで働くスタッフ
大阪へ製パン修行に出かけて技術を取得した。 |
ケースワーカーの採用に際して神一郎は全国に向かって募集広告を出した。仙台から九州まで広い地域から約80名の応募があり、このうち5名を採用した。神一郎は当時のことを「大学の医局で教授が『これからはコメディカルの仕事がポイントになる』と話していたのが頭に残っていて、それでできるだけ優秀な人を集めようと考えて、全国的に求人した」と語る。
1999年から精神保健福祉士の国家資格化がはじまるなど、コメディカルスタッフの重要性が最近になって認識されはじめたが神一郎はそのことに早くから気付き、そのための人材を集めていたのである。 |
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餅つき、スタッフにはさまざまな生活技術が求められる。 |
昭和58年にケースワーカーを増員するとともに、訪問看護、作業療法、レクリエーションなどを含め在宅患者さまを支援する体制を整えていった。ケースワーカー室である医療相談室もその活動内容が知れるにしたがって多くの患者さまが集まってくるようになった。
「医療相談室がだんだんと患者さまのたまり場になってきました。そこで院長(神一郎)に、患者さまのたまり場とできるような場所を借りてほしい」と徳田は訴えた。
徳田の訴えを聞いた神一郎は、松柏地区の空いたビルを借りることにした。そこに12〜13名の患者さまを集めてたまり場としソーシャルクラブと称した。松柏デイケアの始まりである。病院に作らずにあえて街中に作ったのは社会復帰の地ならしや精神科に対する偏見の低減といった意味があったのだろう。
この時点でデイケアは保険点数化されておらず、それだけに立地も含め自由に決められたようである。スタッフは当初相談室の4名が担当したが徐々に病棟の看護婦さんも参加するようになった。
地域社会に認められるために、公民館を借りて調理実習を計画したことがあった。この時、区長さんや館長さんから「メンバーさんが包丁を持つのは困る」と言われたらしい。それでも神一郎や徳田をはじめとするスタッフはあきらめなかった。地域の偏見を取り除くことも“松柏デイケア”の目的の一つだったのだからそう簡単に引き下がれないのである。
その後、精神科デイケアが保険で点数化されたのにともない松柏から病院へと移転した。 |
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町の中の焼き立てパンと喫茶の店
"こなとミルク"
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デイケア課長の川脇博文は「デイケアをしていると退院後の様子もわかるし、何よりも患者さまが良くなっていく様子がわかる。やりがいのある仕事です」と話す。くじら病院では院内でのデイケアだけでなく、街中にあるテナントビルの1階で焼きたてパンと喫茶の店「こなとミルク」を運営している。
この店は国道沿いにあり、冷凍パン生地を仕入れ、それを焼いて販売するとともに、店内での飲食も可能になっている。開店当日に訪れたお客さんの一人は「こんなに種類が揃っているとは思っていなかった」とそのバラエティの多さに感心するほど。
店で働いているのは、デイケアのメンバーさんが中心だが、中にはプレッシャーに負けて一時的に休むことになった人もいる。このような人に対してもしっかりしたサポート体制が整っているため、一時的に休んだだけで復活している。「訪問看護とデイケアで退院した患者さまをサポートしているので、昔のように悪くなりきってから再入院」となる患者さまはなくなっており、再入院となっても早期治療が可能なため入院期間が短縮されている。 |
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